新型感染症の拡大を受けて ー 塾長メッセージ ー

Withコロナの「新しい標準」

落合陽一さんが「Afterコロナじゃなくて、Withコロナで考えよう」と言っていました。長期戦になります。『動的平衡』の福岡伸一さんが「ウイルスは撲滅できない」と言われるように、終わりがないのだから「戦」というのも違うかもしれません。もう二度と元には戻らない新しい世界で、新しい標準を作っていく時です。

コロナはお寺のあり方も変えるでしょう。「檀家制度」は三世代同居が当たり前の時代には、祖父母から子や孫へ世代を超えて受け継がれてきましたが、それが完全に崩れた今、慣習としての継承の力がかなり弱まっていました。そこへ来ての、コロナショック。日常がストップし、今まであり得なかったことが当たり前になります。感染症危機の特徴は、影響が長期化すること。自然災害であれば非日常から日常へ戻ろうとする力学も働きやすいですが、今回のような場合は、非日常が新しい日常として定着する場面がたくさん見られるでしょう。

高齢者との関わりが多いお寺は、感染症リスクを理由に、葬儀の簡素化、法事の延期や中止、月参りの停止、墓参り控えなど、慣習が途切れる要素に事欠きません。特に、そのことが単に慣習としてのみ継続していたものであったとしたら、「世間体があるから面倒でも続けてきたけど、終わらせるのにちょうどいい機会だ」と考える人がいても不思議ではありません。単なる慣習は、途切れるとそこで終わります。二度と復活はしません。

新しい標準を作ることができるかどうか。そのためには、かつて慣習が慣習として定着する背景にあったはずの、人間の根源的な欲求から問い直す必要があります。例えば、Withコロナの葬儀とは。コロナ禍によって亡くなった方には肉親がご遺体に近づくことすら許されませんし、通常の葬儀もごく小規模で開かざるをえません。未来の住職塾の塾生コミュニティでは今、こうした「新しい標準」を作るための議論が活発になされています。

 

ニセの危機感と、本物の危機感

経済的な不安もあります。もともと今後のお寺の存続が危ぶまれ始めていたところに、今回のコロナショック。コロナが原因となってお寺の財政が厳しくなったとしても、宗派や本山も同じでしょうし、政府が保障してくれるわけでもありません。日本人の多くが生活の先行きに不安を強めているのと同じように、危機感を募らせているお寺の方も多いでしょう。

そんな時、気をつけたいのが、危機感の持ち方です。数々の企業変革を手がけてきたジョン・P・コッター教授によれば、危機感には「自己満足」「ニセの危機感」「本物の危機感」の3種類があると言います。

「自己満足」は、周囲の声に耳を貸さず、状況変化に目をつむり、「自分のやり方が正しいんだ」「今まで通りやっていれば大丈夫」と頑なに変化を拒む姿勢です。「いずれコロナが止めばすべて元に戻るはず」という考え方もそうです。現在、この文章を読んでくださっている方には、この「自己満足」は当てはまらないでしょう。

「ニセの危機感」は、周囲の声に引っ張られて、ただ不安感だけが増大し、「どうしようどうしよう、とにかく何でもいいから動かなければ」と恐怖に突き動かされて右往左往する危機感です。自己満足に止まっているよりはマシですが、方向性が定まらず無闇矢鱈に動いて疲弊するため、これも避けたいところです。

「本物の危機感」は、周囲の声にしっかりと耳を傾け、自分の現在地と周囲の状況変化を把握して、進むべき方向性を見定めた上で、素早く行動できる危機感です。深い洞察を持って落ち着いて行動しているため、失敗してもすぐに軌道修正して前に進むことができ、最後までやり抜くことができます。

いざという時、未来の住職塾の塾生が必要な活動を見極めて素早く展開できるのは、日頃から本物の危機感を持って、あらゆる環境変化に対応できるように経済を含めた持続可能なお寺の基盤を整えているからです。

 

求められる宗教者のリーダーシップ

長期戦となること必至のコロナ禍は、まだ始まったばかりです。今後、健康や経済だけでなく、人々の心や人生観にも大きな影響を与えていくでしょう。ますます宗教が求められることは間違いありませんが、その時に求められる宗教であるためには、Withコロナの「新しい標準」へと宗教そのものもアップデートされている必要があります。

人々の生き方の急速な変化に対応するための、お寺の構造改革は必須となるでしょう。私の「日本のお寺は二階建て」論では、お寺の一階は先祖教で、二階は仏教であると説明しています。一階でお布施の経済が回り、二階はボランティア的にやってきたこれまでのお寺は、今後もその構造は基本的に維持されるとしても、「檀家」という枠にハマる人が急速に減少する中で、新しい受け皿を用意して一階と二階の循環を生み出していく必要があります。実は、これからのお寺の「新しい標準」の大きな方向性については十分に議論が尽くされ、すでにかなりはっきり見えてきています。未来の住職塾NEXTでは、その方向性を皆が共有した上で、それを踏まえて自坊をどう変革していくか、必要な事業を推進していくか、一人一人が具体的に描きます。

アップデートとしては、オンライン対応もその一つです。未来の住職塾NEXT自身も、今年度(R-2)から完全オンライン化へと舵を切ります。「学びの価値」と並んで、未来の住職塾の最大の価値の一つである「仲間づくりの価値」を損なうことなく、オンライン化を進めます。これによって遠方の方やお寺を空けにくい方にも負担なく学んでいただきやすい環境を、一気に整備していきたいと思います。コロナ禍は一つの大きなきっかけではありますが、何れにせよ今後、お寺のオンライン化対応の推進は避けて通れません。未来の住職塾の塾生のコミュニティでも、毎日のように様々なオンライン化の事例がシェアされています。

戦後最大の世界危機と言われるコロナ禍の中で、宗教の力が求められています。経済を含めたお寺の経営基盤への不安から解放され、地域社会の中で不安や苦しみを抱える人々の抜苦与楽に専念できるよう、未来の住職塾としても宗教者の方を最大限支えていきたいです。Withコロナの世界で、お寺の生き残りにとどまらない、宗教者のリーダーシップを一緒に発揮していきましょう!

松本紹圭(未来の住職塾 塾長)

【参考資料】
・櫻井義秀先生 「未来を語る寺院仏教へ」
・松本紹圭note 「平常心是道」

 
 

未来の住職塾NEXT 事務局より

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